もくじ
サイバーSFへのオマージュ
サイバーパンク2077のストーリー上、重要なファクターとなる概念がコンストラクトである。ゲーム内ではコンストラクトを「記憶痕跡」という言葉で言い換えてもいるが、つまり魂のことである。
コンストラクト、記憶、魂といえば、押井守の「 攻殻機動隊」のゴーストを思い起こさせる。あくまでも勝手な解釈ではあるが、本作の物語のベースはほぼ攻殻機動隊といっても過言ではない。ネタバレを含むのであまり詳しくは言えないが、本作ではまだリアルな人体の存在を捨てきれないところがあるが、攻殻機動隊の方は肉体を超越したところで議論が進んでいく。
本作ではコンストラクト、記憶痕跡を人体から科学的に分離可能とされ、それを別の人体へ移動させるということが目標であり、若い人体へ移動させることで不老不死が実現する。攻殻機動隊のゴーストというのは、既に人工的な肉体、すなわち電脳として存在することができる。攻殻機動隊の世界で主人公である草薙素子は脳以外を全て義体化したサイボーグである。ゴーストはコピー可能であるがゆえに、自らのアイデンティティーに悩むのである。
本作の登場人物がアリストテレスとかの哲学ネタを引用して小難しいセリフ回しをするのも押井守の演出に通じている。ゴーストといったテーマに疎いという方は、攻殻機動隊の原作マンガやアニメ・映画を見ると良いだろう。アニメ映画である「攻殻機動隊」のオープニング映像は当時、非常に衝撃を受けた記憶がある。
その他、本作に通じる過去の近未来SF作品を以下、簡単に例示する。
本作で描かれているナイトシティは都市の象徴である。そして都市は人間を堕落させ、忌避すべき存在として描かれている。都市と人間との関係性を丁寧に描いている作品としては劇場版のパトレイバーシリーズがおすすめである。人間の本質に迫るテーマを持ったアニメを誰が見るのかと思ったものである。
映画「ブレードランナー」の都市の描写というものが、現在までのサイバーパンクや近未来SFの風景を形成していると言っても良いだろう。本作のナイトシティの風景でもそのような都市の描写を見ることができる。
キアヌ・リーヴスといえば、マトリックス3部作である。本作では伝説のテロリストで左腕が義体のギタリストであるジョニー役で登場する。本作主人公がダイブすることになるサイバー空間はまさしくマトリックスのデジタル世界を彷彿とさせる世界である。
短絡的だが、ハイウェイとバイクのSFアニメといえば、「AKIRA」である。細かい説明は不要だろう。
SFに限らず瓦礫(がれき)というものを死と再生のメタファーにしている映画は色々あるが、特にロボットものでは捨てられ生まれ変わる場所として廃棄処理場が出てくるシーンが多い。
これらの作品に共通していることは、ロボットの人格形成や不老不死といった人類の根源的なテーマでもある。これらSF作品を見ることでさらにサイバーパンク2077のゲームプレイを楽しむことができるだろう。