もくじ
概要
Youtube: 『今際の国のアリス』予告編 - Netflix
基本データ
- TVシリーズ・タイトル:今際の国のアリス
- 配信日:2020年12月10日
- キーワード:不思議の国のアリス、ビデオゲーム、タイムスリップ、SF
原作は同名のマンガです。本記事では実写ドラマ版の情報や考察を記述します。TVシリーズですが、Netflixにてシーズン2が2022年12月に配信される予定です。( 参考URL: #1, #2)
主要キャスト
- アリス:主人公の男、ニート、実家が金持ち、大学中退
- カルベ:アリスの友人の男、バーの店員、女にモテる
- チョータ:アリスの友人の男、IT系の会社員、母親が新興宗教会員
- ウサギ:女、父親が高名な登山家、運動神経バツグン、途中からアリスと行動を共にする
全ゲーム要約
エピソードは全部で8つ。本ドラマ内に登場するゲームの数は全部で6つです。ここではそれぞれのゲームの特徴やルールをまとめておきます。できるだけ本ドラマのストーリーは記載しないようにしますが、一部ネタバレがあるかもしれませんのでご注意ください。
Youtube: シーズン1 - アリスが挑む全ゲームのルール説明まとめ | 今際の国のアリス | Netflix Japan
エピソード1
- ゲーム:脱出ゲーム
- カテゴリ:脱出ゲーム
- 難易度:?
- 場所:雑居ビルの1フロア
主人公が渋谷駅のトイレから異空間へタイムトラベルした後の最初のゲームです。
閉じ込められた部屋から脱出するいわゆる脱出ゲームの一種です。昨今のモバイルゲームでは人気のあるジャンルのひとつです。通常のビデオゲームやモバイルゲームと違う点は、選択を間違えるとプレイヤーが実際に死ぬということでしょう。この先のすべてのゲームでこの特徴は継続されます。通常のビデオゲームは当然ながらコンティニューが可能です。
エピソード2
- ゲーム:鬼ごっこ
- カテゴリ:アクションゲーム+脱出ゲーム
- 難易度:ハートの5
- 場所:マンション1棟
- ルール:鬼から逃げて制限時間内にセーフルームを探してたどり着かなければならない。協力プレイも可能、協力しないとクリアできない設定。
エピソード3
- ゲーム:かくれんぼ
- カテゴリ:バトルロイヤルゲーム
- 難易度:ハートの7
- 場所:植物園
- ルール:1人が狼、3人が羊。狼に見つからないように隠れる。見つかった人が次の狼。終了時、狼だった人がクリアできる。羊だったら爆発。クリアするには狼になって最後まで隠れる行動が必要。狼以外は全員死ぬ。
エピソード4
- ゲーム:ディスタンス
- カテゴリ:謎解きゲーム
- 難易度:クラブの4
- 場所:高速道路のトンネル
- ルール:制限時間の2時間以内に試練に耐えてゴールを目指す
エピソード5
- ゲーム:電球
- カテゴリ:パズルゲーム
- 難易度:ダイヤの4
- 場所:地下のボイラー室
- クリア条件:電球のスイッチA, B, Cのどれかを当てる
エピソード6~8
- ゲーム:魔女狩り
- カテゴリ:バトルロイヤルゲーム+推理ゲーム
- 難易度:ハートの10
- 場所:ビーチ
- ルール:女を殺した魔女を見つけ出す。制限時間2時間。
考察ノート
ストーリーはタイトルから類推できるように童話で有名な「不思議の国のアリス」( 参考URL: #3)を連想させる異世界における冒険物語です。ただ「不思議の国のアリス」のようなファンタジー性はなく、現実的な世界もしくは空間を舞台としています。ドラマのジャンルとしてはSFと言えるでしょう。
まずは「今際の国のアリス」のゲーム的な要素について考えてみます。本作のゲーム要素について考えを進めながら、話題が色々と派生してしまうかもしれませんが、流れに任せ思いつくままに様々な作品について話を展開したいと思います。このドラマで展開されるゲームは単純なものが多いです。最近のゲームを例にすると無料のモバイルゲームにありそうなゲームばかりです。
一般的にビデオゲームの特徴としてループという要素があります。しかし本作は課せられたゲームをクリアできないとゲームオーバーとなり死亡します。主人公が迷い込んだ世界にはいくつかまだ解明されていない謎があるのですが、このようなゲームは通常デスゲームと呼ばれます。ビデオゲームでは通常ループのないデスゲームは成立しません。
このドラマと同じような性格を持つ作品に「バトルロワイアル」( 参考URL: #4)という小説と映画があります。これもデスゲームではありますが、「バトルロワイアル」に登場するゲームは「鬼ごっこ」のみです。中学生のクラスを無作為に選び、隔離されたエリアへ送られ、強制的に武器を用いて殺し合うという身も蓋もないルールですが、ハリウッドで映画になった「ハンガーゲーム」( 参考URL: #5)も「バトルロワイアル」と同じようなデスゲームです。「ハンガーゲーム」の方は生き残ったヒロインがゲームを繰り返し世界を救済するという物語に繋がりますが、「バトルロワイアル」はただ殺し合って終わるという結末が当時物議を醸しました。
当然ながら現代のバーチャルなゲームであればプレイヤーが仮に死んだとしても生き返るし、ビデオゲームであればプレイヤーは当然死なずに何度でもリセットして再スタートできます。そもそも現実的に実際に死ぬゲームがあっても誰もプレイしないでしょう。古代でもなければ、それは物語の中でなければ成立しません。
実際にデスゲームというのが存在するのであれば、それはもう実際の戦争かシリアスゲームの類いに近いものとなるでしょう。まさしくリアルに死を体験するドキュメンタリーであり、ゲームオーバーすなわち生が終わり死が訪れる体験ができるゲームとなります。古代であれば、奴隷や罪人を使い闘技場での闘いが大衆向けにリアルなゲームとして娯楽化されていたわけですが、今まで挙げてきた作品は現代のコロシアムを再現しているとも考えられるでしょう。
「バトルロワイアル」は原作の制作時期から考えてビデオゲームを参照した作品ではありません。強いて遡れば古代ローマの闘技場が元ネタと言えるかもしれません。「バトルロワイアル」の殺し合いのバトル形式は、ビデオゲームとして制作された「PUBG」( 参考URL: #6)に代表するバトルロイヤルゲームに強い影響を与えたと言えます。
一方、「今際の国のアリス」は多分にテレビゲームやビデオゲームのオマージュが散りばめられています。本作の世界を生きている間は、ある部分でエンドレスにゲームを何度もプレイする必要があり、それが疑似的にゲームがループするという面でも、こちらの方がより現代のビデオゲームに近いシナリオとなっていると言えるでしょう。日本の作品である「バトルロワイアル」が現代のバトルロイヤルゲームに影響を与え、さらにそれらバトルロイヤルゲームが「今際の国のアリス」のゲーム性に影響を与えていると言えなくもないです。
僕は現代のビデオゲームの最大の特徴としてループという要素を考えています。ゲームの面白さを高めるために各作品はループという要素をうまく使っています。インタラクティブなメディアであるゲームだからこそループをうまく利用できるとも言えます。テレビドラマや映画は一方通行のパッシブなメディアなため作品の要素としてループを使うというのは難しいのかもしれません。しかし、ゲームメディア以外のパッシブなメディアでもうまく物語をループさせている作品がいくつかあります。
ハリウッド映画やアニメ映画においてゲームのループする要素を取り入れている作品の例をいくつか挙げておきます。
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うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー( 参考URL: #7)
編集中 -
ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル( 参考URL: #8)
本作品はジュマンジシリーズの2作目の映画作品となります。ビデオゲームを忠実に模倣したストーリーとなっています。主人公を含め各キャラクターはライフが3つあり、2回まで死ねる(生き返る)設定になっています。 -
All You Need Is Kill( 参考URL: #9)
本作品は本ブログの別記事「 ゲームが先か、ループが先か」でも言及していますが、地球外生命体との戦闘を繰り返すタイムリープの作品です。主人公は戦闘で死亡するとまた前日に戻り戦闘を繰り返すというSFゲームの典型的なループ要素を模倣しています。
さらにマンガとループの関係について考えてみます。マンガの構造上、必然的にループ性を持つという場合があります。代表的な作品で言えば、「ドラゴンボール」( 参考URL: #10)や「ONE PIECE」( 参考URL: #11)です。ループ性はマンガよりそれらを原作としたアニメに特に顕著に見られるかもしれません。マンガは週刊で出版されており、アニメは毎週放送されます。マンガやアニメの人気のある作品というのは長期の掲載や放送という形態をとるため、どうしても同じようなストーリーが毎週繰り返されるというパターンになる傾向が強いと思います。そのため、あたかも緩やかにループしているような現象が発生します。このような作品はループ自体が視聴者の生活に無意識に組み込まれるという状況が生み出されます。
同様に一見、ゲームと全く親和性のないアニメが、実はループ的な世界観を表わしている作品が日本にはいくつかあります。それらの代表作としては、「サザエさん」( 参考URL: #12)や「ちびまる子ちゃん」( 参考URL: #13)、「ドラえもん」( 参考URL: #14)などのTVアニメシリーズです。ここでは深くは掘り下げませんが、日本の社会にゲーム文化が自然に入り込めた背景にはこのような作品の外でループするような環境や土壌が既に日常にあったからかもしれません。
さらに見ていくと「今際の国のアリス」の後に配信され世界的に人気を博した韓国発のNetflix オリジナルドラマである「イカゲーム」( 参考URL: #15)も同様にデスゲームの性格を持った作品です。こちらはよりスポーツ性の強いゲームを行い、最後まで生き残るデスゲームです。バトルロイヤルゲームの要素も見られますが、「イカゲーム」は「今際の国のアリス」よりも「バトルロワイアル」に近い性格を持った作品です。
感動的な物語を考えた場合、生死を賭けないループ作品は盛り上がりに欠ける傾向にあります。だから、「今際の国のアリス」については、退屈なループ要素を取り入れるより、ストーリーにスポーツ性の高いデスゲームを取り入れ娯楽性の高い作品に昇華しようとしているかもしれません。
参考URL
#1: 今際の国のアリス - Wikipedia
#2: Alice in Borderland (TV series) - Wikipedia
#3: 不思議の国のアリス - Wikipedia
#4: バトルロワイアル - Wikipedia
#5: ハンガーゲーム - Wikipedia
#6: PUBG - Wikipedia
#7: うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー - Wikipedia
#8: ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル - Wikipedia
#9: All You Need Is Kill - Wikipedia
#10: ドラゴンボール - Wikipedia
#11: ONE PIECE - Wikipedia
#12: サザエさん - 公式ホームページ
#13: ちびまる子ちゃん オフィシャルサイト
#14: ドラえもん - Wikipedia
#15: イカゲーム - Wikipedia
Photo by Nicole Baster on Unsplash