【ゲーム研究】ゲームが先か、ループが先か

ループがなければゲームとはいえない?

Posted by 51n1 on 15 Jun, 2021

もくじ

ループシステムについて

ゲームはそもそもループシステムを内包しており、本質的にはループしないものはゲームではないと言えるかもしれない。だが、あえてループをゲームデザインや作品の物語として明確に取り込んだ作品がいくつか存在する。

それらには人間の輪廻転生、不老不死というものの願望が反映され組み込まれ、形を変えた現代の宗教物語となっている。

人間の本質としてループというのはとても根源的なんだと思う。だからループという本質を持つゲームというのは現代の人間を魅了してやまないのではないか。そんなふうに今は考えている。ゲームだけではなく、表象文化的に芸術とループというテーマで研究したらとても面白いだろう。

※ここではループというのは、タイムループ、タイムリープ、タイムスリップを含んだ表現として使用する。

ゲームの中のループ作品

ループ作品というのはゲームクリアするまで死んで生き返るというループを繰り返すので単調になりやすい。以下紹介している作品は単調にならないようなゲームデザインがうまく考えられている。

Returnal (リターナル)

#1【PS5の本領発揮!】Returnal(リターナル) 実況【死のループと弾幕系ローグライクTPS】

宇宙でループする世界。死亡すると宇宙船の墜落場所に戻る。毎回マップは変わる。主人公が記録した録音データから前ループの自分の行動を知る。録音テープの音声から自分が死のループに囚われていることを知る。異星におけるループの謎を解く。前ループの自分の死体に出会う。何度も死にループを繰り返しながらやっとラスボスを倒し、異星を脱出し地球に帰還。そして60年後、老いて死んだ。しかし、ループは終わっていなかった。

ゲームオーバーからリセットしてリスタートするゲーム的ループを本当の意味で一人の人間の物語としての人生のループとしてメタ表現した作品である。一生涯をエンドレスに繰り返す運命から逃れられないプレイヤーの気持ちがなんとなく分かるだろうか。それは想像するだけで絶望だろう。

Outer Wilds

#1【PC】Outer Wilds(アウターワイルズ)【太陽の爆発まで20分!タイムリープを繰り返し謎を解く】

宇宙消滅の約20分前からゲームがスタートする。最初に世界の終焉を見せられるのはなんともやりきれない気分になるが、宇宙の消滅とともに自らの死を体験した後に20分前へ戻りループが始まる。本ゲームでは、死を繰り返しループしながら毎回限られた時間で宇宙消滅の謎を解き明かすことが目的となる。宇宙消滅の回避がループを抜け出す方法となる。

ゲーム以外のループ作品

All you need is kill (小説、映画、マンガ)

原作は小説であり、ハリウッドで映画化されたのだが、改めてこのマンガ作品を読み直した。戦闘が開始し、敵の攻撃を受けて死亡してゲームオーバー。そしてゲームはリセットされ、最初に戻る。「 ゲーム的リアリズムの誕生」で東浩紀は本作(彼はタイムスリップ作品と呼んでいた)についてゲームのメタ物語的な経験を利用した作品であると述べているが、この作品はゲームの死を表象的に表現していると思われる。いや、もし現実的にゲームのような死とループが起きたら、どうなるかという物語をSF小説として描いたということだろうか。ただゲームのループ作品としては普通な物語で、ループしながら学習して生き残る術を探すというのは、ゲームプレイヤーがゲームを何度もプレイすることでゲームのクリア方法を探すことと同意である。

スカイ・クロラ (アニメ、小説)

この作品は厳密にはループではないんだけれど、なんだか物語全体がループ的な感覚に覆われている作品なのでここで取り上げてみたいと思う。まだ僕の中で説明しきれない部分があるのだけど、とりあえず例示してみたい。

本作のストーリーとか表現されていることを至極大雑把に言ってしまえば、優秀なパイロットの魂と肉体がコピーされ、ループする物語である。要は優秀な同一の遺伝子を元に超短期間に人間を再生させるという技術を使うことで、その世界の住人にとっては、あたかも死んだ翌日に同一人物がよみがえったような感覚であり、体形や顔が同じ人物がループしている感覚を味わうというなんだか不思議な空間を描いている。