「3Dゲームをおもしろくする技術」ブックレビュー

Technology for making 3D games - Book Review

Posted by 51n1 on 11 Feb, 2023

もくじ

基本データ

本書概要

副題:実例から解き明かすゲームメカニクス・レベルデザイン・カメラのノウハウ

著者のゲーム開発の経験と実際のゲームプレイを通して3Dゲームの技術や仕組みを解明する内容となっています。

著者は本書入門の位置づけとして「2Dゲームをおもしろくする技術」という本も執筆されています。こちらの本については当ブログの別記事『 「2Dゲームをおもしろくする技術」ブックレビュー』で紹介しているので参考にしてください。

本書内で事例として主に下記のゲームタイトルが参照されています。これらのゲームタイトルからわかるように、本書で主に言及されているのは、3DのアクションゲームでほぼTPSタイプのゲームとなります。

本書で参照される主なゲームタイトル一覧

  • スーパーマリオブラザーズ
    2Dジャンプアクションゲーム:プラットフォーマー:サイドビュー
  • スーパーマリオ3Dランド
    3Dジャンプアクションゲーム:プラットフォーマー:TPS
  • GOD OF WAR III
    Dアクションゲーム:スラッシャーゲーム:TPS
  • ゼルダの伝説 スカイウォードソード
    3Dアクションゲーム:チャンバラゲーム:TPS
  • BATMAN: ARKHAM CITY
    Dアクションゲーム:アクションゲーム:TPS
  • ANUBIS ZONE OF THE ENDERS
    3Dアクションゲーム:ロボット格闘ゲーム:TPS
  • DARK SOULS
    3Dアクションゲーム:アクションゲーム:TPS
  • biohazard 4
    3Dアクションゲーム:ガンシューティング:TPS
  • アンチャーテッド -砂漠に眠るアトランティス-
    3Dアクションゲーム:ガンシューティング:TPS
  • Call Of Duty: Modern Warfare 3
    Dアクションゲーム:ガンシューティング:FPS

本書目次と内容

  • 第1章 3Dゲームをおもしろくするプレイヤーキャラの技術
    プレイヤーキャラクターの移動・格闘・攻撃アクションに使われている技術を解説されています。
  • 第2章 3Dゲームをおもしろくする敵キャラの技術
    敵キャラクターの移動・格闘・攻撃アクションに使われている技術を解説されています。少々古い情報ではありますが、AIの使われ方の考察がおもしろいです。
  • 第3章 3Dゲームをおもしろくするレベルデザインの技術
    レベル、いわゆるゲームマップやゲームステージのデザイン技術について解説されています。
  • 第4章 3Dゲームをおもしろくするアタリ判定の技術
    目に見えないゲーム制作の部分ですが、イベントやアクションをトリガーするためのキャラクターやマップの当たり判定の技術についてわかりやすく解説されています。
  • 第5章 3Dゲームをおもしろくするカメラの技術
    3Dゲームにおける基本的なカメラ技術の解説です。映画との違いやTPSとFPSのカメラの扱い方なども取り上げられています。

印象に残った文章

  • 繰り返しになりますが「アフォーダンス指向ゲームデザイン」は、「映画的ゲーム」を実現する最適な仕組みなのです。(p. 269)
  • プレイヤーキャラの攻撃がヒットしたことを明確にプレイヤーに伝える方法として、「ヒットストップ」があります。(p. 620)
  • 「このコインを取ったら、どうやっても確実に死ぬ」というようなレベルデザインは、スーパーマリオシリーズにおいて一度も作られていません。(p. 661)
  • オープンワールドには「オープンワールドで誰かが生活していることを感じさせてくれる小さな物語」も必要なのです。(p. 791)
  • オープンワールドは、それ自体も大きな物語の「キャラクター」といえるのです。(p. 794)
  • このように、プレイヤーが「詰んだ」と思っても、次の瞬間には「逆転の可能性」が見えるレベルデザインにすることも、レベルデザイナーの腕の見せ所です。(p. 966)

読書感想文

主観的な内容も若干含まれている部分もあるかなと思いますが、著者のこれまでの知見と実際のゲームプレイを通してゲームの技術や仕組みを解明するというスタイルなので、本書の内容はある意味、ゲーム観察学とも言えるかもしれません。

主要なゲームタイトルを引用しながらアクションゲームの移動や攻撃・防御に関するゲームシステム、ゲームデザインのアイデアやヒントを説明していますので、ゲーム開発入門者にとっては本書をゲーム制作のヒント集として大いに活用できると思います。

本書は紙の書籍の場合、750ページ超になりますので、とても読むのに時間のかかる本だと思いますが、その分じっくり読むことができると思います。

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