「2Dゲームをおもしろくする技術」ブックレビュー

ゲームのおもしろさの仕組みを考える

Posted by 51n1 on 30 Jun, 2021

もくじ

基本データ

  • 書名:2Dゲームをおもしろくする技術
  • 著者:大野 功二
  • 出版社:SBクリエイティブ
  • 発売日:2015年8月25日

本書要約

本書は「3Dゲームをおもしろくする技術」の入門編という位置づけであり、電子書籍専売とのことである。

冒頭、ゲーム機が世界に出始めた頃の2つのレトロゲームを比較してゲームの面白さとはなにかを述べることから始まり、具体的なゲームタイトルを例にしてプレイヤーキャラクター、敵キャラクターの移動、ジャンプ、アクション、リアクション、無敵、ノックバックなどの基本的なゲームメカニクスについてどのようなアイデアを元に作られているかを説明する。以降同様に、レベルデザイン、当たり判定、カメラについて具体的な例を挙げながら基本的なことを解説する。

例として挙げられている主なゲームタイトルは下記のとおりである。
PONG, ブロックくずし(ブレイクアウト)、スペースインベーダー、スーパーマリオブラザーズ、ゼルダの伝説、メトロイド、ストリートファイター2、ボンバーマン

本書では主に2Dアクションゲームとしてスーパーマリオブラザーズとゼルダの伝説に関して言及されることが多い。

印象に残った文章

「おもしろいゲームには、必ずリスク&リターンの構造が成り立って」いる

「ゲームの企画」の最初のネタは「現実の経験や模倣」から生まれますが、「ゲームデザイン」は「過去のゲームデザインからのノウハウ」から生まれます。

プレイヤーキャラのアクションには、プレイヤーに体感してほしい様々な「ゲーム体験」を実現するための「ゲームをおもしろくする技術(ゲームメカニクス)」が詰め込まれています。

Bボタンは「官能性ボタン」といってもよいかもしれません。

ゲーム体験における「リアル」とは、グラフィックやサウンドなどの外観だけでなく、ゲームに組み込まれたメカニクスによって再現された「インタラクティブのおもしろさ」にも大きく影響される

ゲームでもスポーツと同じように強くなれる

2Dゲームの遊びやすさには、「グリッド単位のほうがプレイヤーは考えやすいこと」と「ドット単位で移動操作したほうが遊びやすいこと」という二つの視点がある

おもしろいゲームの敵キャラは、リアクションで「敵キャラとプレイヤーとの対話」が成立しています。

簡単にできる一つのアクションも二つ同時にさせると難しくなる

プレイヤーが様々な発見を体験できるように、レベルデザインにおいて注意深く「偶然の発見」が設計されているからです。

ジャンプアクションゲームは「重力との戦い」です。

読書感想文

2Dアクションゲームの基本的なメカニクスをコンパクトにまとめた文章である。ビデオゲームをよく遊び、知っている人であれば、当然知っている内容かもしれないし、ゲームをそれほど遊ばないものにとっては有益な情報だろう。

本書の内容は、どれも基本的なことかもしれない。ただ本書を読んでから、とあるゲームをプレイしたところ、何だかゲーム制作者の意図というものを探りながらプレイするという感覚を得た。

基本的なことであっても明確に言語化するということが大切だということを再認識した。本書はきっかけに過ぎないかもしれないが、多角的な視点を持って、ゲームを分析してみたいという読者にとっては導入の一冊としてとても適しているだろう。