「Sable」ゲームレビュー

Game Review for Sable

Posted by 51n1 on 13 Dec, 2021

もくじ

  1. 基本データ
  2. ゲームレビュー
  3. まとめ
  4. 参考リンク

基本データ

Youtube: Sable - Launch Trailer - Available Now (4k)

  • ゲームタイトル:Sable
  • 発売日:2021年9月23日
  • デベロッパー:Shedworks
  • パブリッシャー:Raw Fury
  • 対応機種:Xbox, PC(Steam)
  • 対応言語:英語

ゲームレビュー

※以下、ネタバレ含みますのでご注意ください。

探索、登る、跳ぶ、浮く、滑る、解決する

Sableゲームプレイ画面

Sableというゲームをどのように言い表すことができるでしょうか。SF風オープンワールドゲーム。パズルゲーム。クライミングゲーム。ホバーバイクカスタムゲーム。ロードムービー風ゲーム。全て正解だとは思いますが、それだけでは全てを言い表せないでしょう。

Sableの世界には墜落した巨大な宇宙船や未知のSF的な建造物が多く存在しますのでテーマのひとつは宇宙であり、地球ではない別の惑星の物語だというのが推測できます。また、それらの裏付けとしてウィキを参照するとゲームのコンセプト自体はスターウォーズから引用しているということが記載されています。

ただ、SableのゲームプレイビデオをYouTubeで初めて見たとき、僕は少なからず松本大洋の世界が見えました。実際にプレイしてみると日本のマンガやアニメの影響を感じました。もちろん直接的に特定の作品を引用しているというわけではなく、Sableのゲームデザイン自体に日本を含むアジアの表象が多く含まれているということだと思います。

僕は普段ほとんどゲームをプレイしないので、そもそもゲームレビューするというのもまれです。それがなぜここでレビューをしようと考えたのか、それを考えてみたいと思います。ちなみにSableは僕にとって数少ないクリアしたゲームのひとつとなりました。今回、ゲームをクリアできたのはSableのゲームデザインやゲームシステムのおかげだったと思いますが、それに加えて音楽、グラフィックが非常に僕の中に自然に入ってくるものだったからだと考えています。

アニメ調のグラフィックと牧歌的なサウンド

Sableゲームプレイ画面

Sableの映像は空のスカイブルーと砂漠のベージュの色が個性的なアニメ調のグラフィックで表現されています。3Dモデルにトゥーンシェイダーを適用してアニメっぽいグラフィックにするというのは最近流行りのようですが、ジブリのアニメーションをそのままゲームにしてキャラクターを操作しているような感覚になるグラフィックです。カメラワークも同様です。

また、Japanese BreakfastというアメリカのインディグループがSableのサウンドを担当しています。音楽はSableの世界観とマッチしており、僕の好きなサウンドでとても心地良いサウンドです。

人生の選択肢というのはそもそもそれほど多くない。実際の人生は少ない選択肢の中から取捨選択して時には妥協して選び進んでいくしかない。

Sableゲームプレイ画面

Sableにおいてビデオゲーム的な要素というのは意図的に少なく設定されていると思います。オープンワールドゲームですが、この世界の中で自由になんでもできるというゲームではないです。まず、1人用ゲームであり、オフライン専用タイトルです。つまり映画やテレビ、アニメと同様に基本としてはプレイヤー1人で操作し見て楽しむという作品です。

そしてSableのオープンワールドの中でプレイヤーができることは限定的です。歩く。走る。しゃがむ。ジャンプする。登る。物をつかむ。といった基本的な身体動作とホバーバイクに乗って走る。ジャンプして浮かぶ。といった動作のみです。このようにSableはできることが少なく、その少ない選択肢の中からまずできることを試すことから始めます。

また、ゲームステータスも非常に限られています。プレイヤーの持つステータスというのはスタミナのみです。スタミナは走ることと登ることで消費されます。基本的にホバーバイクに乗れば走る必要もなくスタミナは登るという動作に必要なステータス値となります。このスタミナはすなわち登る能力になりますので、スタミナが少なければ、高い岩山には登れないということになります。

ゲームの難易度というものを否定するゲーム

Sableゲームプレイ画面

つまりこのゲームのひとつの目的はスタミナを増やしてできるだけ高い場所まで登るということになります。あたかもそこに山があるから登るというような登山家のような人生観を持ったゲームと言えるのですが、ゲームによくある経験値やスキルポイントはもちろん、ヒットポイント、マジックポイント、攻撃力、防御力、などのステータス値も一切持ってません。ですので、明示的にプレイヤーがレベルアップすることもありませんし、攻撃もしなければ、敵もいません。誰も殺さないし、誰も死にません。

正直言って、Sableにはゲーム的な難易度というものは存在しません。HPもないのでゲームオーバーになることもないです。ただ、ゲームの世界に私が存在しているというゲームの難易度としては非常に軟弱なゲームです。一応、お金の概念はあります。

マスクという名の自分探し

Sableゲームプレイ画面

アイテム収集の要素として、このゲームではマスクを集めます。マスクは比ゆ的な表現で、つまりマスクを探すということが自分探しという意味を持っていると言えます。

マスク探しというのはアイテム収集ではあるのですが、最終的にこのマスクがストーリのコアとなります。Sableでメインなのかサブなのかわからないクエストをこなしてマスク集めをするのですが、一見ゲーム的な表現では単にアイテム収集という行為が最後ストーリーに影響を及ぼす要素となります。

どのような大人になりたいのかそれをマスクというメタファーとして表しています。つまり、Sableはティーンエイジャーからどのような大人になりたいのか人生をどう生きたいのかということを知る物語であると理解できます。

死なないゲームを通して死を体験するゲーム

Sableゲームプレイ画面

Sableのプレイヤーは死にません。ゲーム内でプレイヤーは一度も死なずにゲームクリアまで生を全うすることができるのですが、なぜかSableをプレイしていると死を身近に感じることがあります。

それはなぜなのか考えてみたのですが、Sableに登場するキャラクターはプレイヤー含め全員がマスクをしています。だからそもそも生きているのか死んでいるのか外からでは分かりません。マスクによってキャラクターは全てある意味では没個性的な存在になります。

それによってSableの世界の住人自体が死んでいるような感覚になります。つまりSableの住人は既に死んでいるのではないか。彼らは死者だから、高所から落ちても死なないのではないか。そんなことを夢想しているうちに彼らは全員が神秘的な存在に見えてきます。つまり別の面から見ると、Sableは死後の世界にも見えるというわけです。

まとめ

長所

  • プレイヤーやNPCが死なない。
  • 攻撃的な表現がない。
  • グラフィックとサウンドがアート的である。
  • 岩山を登るだけでも気分が良い。
  • ゲームクリアが最終目標ではなく、ゲームを通じてプレイヤー自身が何かを感じ取ることがこのゲームの目的であること。
  • 細かいスキルなどがないのでシンプルに遊べる。
  • 通常プレイ時にゲーム的なUIが全く表示されない。表示する必要もない。

短所

  • 現在は選択できる言語は英語のみで日本語がない。日本語化すれば、もっと日本人の間で評価が高まるだろう。
  • 会話部分が音声がなくテキストのみ。会話ボイスが付くとより一層クォリティが良くなるはず。

総評

インディーゲームでこのクォリティはさすがだと思う。とりあえず買いです。

参考リンク