「プレイ・マターズ」ブックレビュー

Play Matters - 遊び心の哲学

Posted by 51n1 on 25 Oct, 2021

もくじ

基本データ

本書要約

本書は「遊び」をメインテーマに据え、以下のキーワードと絡めて遊びとは何かを論じています。

キーワード:遊び心、おもちゃ、遊び場、美、政治、建築、コンピュータ

印象に残った文章

遊びは、言語、思想、信仰、理性、神話などと同じように、世界のうちに存在するモードの一種である。

遊びは、秩序と混沌を行き来する運動なのだ。

この本で示したいのは、ゲームを通した遊びの理論ではない。ゲームはたいして重要ではないのだ。ゲームは、遊びのたんなるひとつのあらわれ、ひとつの形式であって、唯一の形式ではない。

遊びはルールから生まれ、ルールによって媒介され、ルールを通して位置づけられるということだ

遊びは攪乱的である。そして、その攪乱性によって遊びは危険なものになることがある。

遊び心は、本来遊びであるべきではないものを乗っ取って、遊びめいたものに仕立てあげる。

遊び心は、流用を純粋なかたちで生じさせる。

重要なのは、テクノロジーは人に服従する召使いでも人を服従させる主人でもなく、人が自分を表現する源泉であり、人が人として存在する方法だということである理解することである。

わたしたちは遊ぶ、ゆえにわたしたちは存在する。

遊び心は、世界をおもちゃに変えるのである。

ゲームはまさに遊びの形式的なあらわれだからだ。

ゲームは、形式を通じて遊びと交信する特権的な手段である。それゆえ、ゲームを作ることは、重要な社会活動になるはずである。

流用的で創造的で攪乱的な遊びをそのなかに組み込み、それを可能にし、うながすようなゲームは、どうすれば作れるのか。

遊びの建築家

ゲームデザインは死んだ。これからは遊びの建築の時代である。

本書では遊びを、流用とそれに対する抵抗のダンスとして、あるいは秩序の創造と秩序の破壊のダンスとして考えてきた。

あらゆる電算処理は遊びである

遊びは、流用であり、表現であり、個人的な事柄である

遊びを通した自己表現は、世界をわたしたち自身のものに変える。

遊び心は、遊びでない文脈を〔本来とは〕別のやり方で解釈することを可能にする態度のことだ。

読書感想文

遊びというものは社会の一般的な常識としては本来人間には必要のない存在として認識されてきたと思います。あくまでも推測ですが、昔の少なくとも戦後の高度成長期に生きていた日本人は遊びは悪だという認識があったと思います。だから子どもたちが好んで遊ぶゲームは悪だと決めつけられていたと思います。なぜかゲームや遊びというのは子どもを持つ親にとってとても印象の悪い存在だったのです。

しかし普通に考えれば、何事にも良い面・悪い面が存在します。勉強が推奨される社会で「遊ぶ」イコール「不勉強」という先入観が強かったのではないでしょうか。人間の生活に不可欠な食事でも食べ過ぎれば肥満になるし、食べなさ過ぎても拒食になり病気の原因となります。本来、ゲームや遊びについても同様のことが言えるのでしょう。ゲームに熱中し過ぎれば、ゲーム依存症になり、ゲームを全くしないということは人間に不可欠な考え方や思考を育てるための機会を損失したり、そもそも重要な機能が欠如するかもしれません。

本書のねらいを簡単にまとめれば遊びはとても重要な存在であるということだと思います。本書はそのような遊びやゲームを人間の生活に重要な要素として考え直すためのきっかけとなる論考だと思います。遊びという視点から様々な社会的現象を捉え直すと面白いのではないでしょうか。この世界で起きている現象や人間の活動はすべて遊びと定めて真面目に遊びを研究しようという主張です。

遊びとゲームの関係についての言及は少ないですが、著者は本書ではゲームよりも遊びを意図的に上位の存在として哲学的解釈を与えようと試みているのかもしれません。著者は未来のゲームデザイナーはアーキテクトとなるべきだと提案しています。流用的な遊びを前提にした場合、これまでのような形式的なルールをデザインするだけのゲームデザイナーは不適格だというわけです。

日本語版の書籍の装丁からゲーム=遊びについての論考を連想したのですが、ゲームという狭い定義の遊びではなく、人間の本来の遊びについて考えるというものでした。ビデオゲームを考えるためのPlayful Thinkingシリーズの一冊ということもあるので、本書内では随所でビデオゲームとの関係性にも言及していますが、本書の本題はあくまでも遊びとなります。

日本語訳には若干読みづらさを感じたので、次は英語の原文を読んでみたいと思います。ちなみに本書の本論はページ数の6割ぐらいで残りは原註、訳註のページとなっていました。

ちなみに遊び心を持って創作活動をしている「藤原 麻里菜さん」という方がいます。芸術家なのか発明家なのかよく分からないのですが、現代で遊び心を体現している方だと思います。まさに遊びを様々な社会的な行為や行動に流用している方だと思います。

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