8x8ドット絵・制作ノート

8x8 Pixel Art Work Note

Posted by 51n1 on 20 Dec, 2022

もくじ

はじめに

こちらは「 裏ドット絵 Advent Calendar 2022」の20日目の参加記事です。

本記事では個人で制作している「8x8ドット絵」について制作の経緯や制作を通じて学習したことなどを拙文ですがまとめてみたいと思います。

最新の8x8ドット絵についてはTwitterアカウント「 @t51n1」に随時投稿しています。また、これまでの8x8ドット絵は別記事「 8x8ピクセルアート・カタログ」を見てもらえますと幸いです。今のところ、100テーマまでまとめています。

8x8ドット絵を作ることになったきっかけ

数年前からゲームの制作に興味を持ち、主にUnityによるゲーム開発の学習を始めました。ゲーム開発の学習の過程でゲームに使用するグラフィックについて色々と模索していたのですが、初級者でも作成しやすいドット絵を試してみようと考えました。それがきっかけとなり、ゲーム用のグラフィックとしてドット絵を作成するようになりました。

当初、絵自体描くことが久しぶりでしたし、デジタルで本格的に描くのも初めてだったので、練習を兼ねて8x8サイズのドット絵を描き始めました。今思うとゲーム素材として使用することを想定して16x16でも良かったのかもしれませんが、8x8と小さいサイズだったため、仕事終わりでも短時間で作成でき、すぐにTwitterに投稿できるという手軽さがモチベーション維持に繋がったかなと思っています。

以下はドット絵を描き始めた1年前頃の初期作品です。

Pinkman 歩行アニメーション(16x16)

Pinkman イメージ・バリエーション(16x16)

Midi Pad 発光アニメーション (32x32)

8x8ドット絵の初期習作(walk&run)

8x8ドット絵の制作プロセスなど

制作ルール

1つのドット絵を8x8ピクセルの大きさで描くというのが唯一のルールです。ただ、描くテーマによっては8x8に収まりきらない場合も多々あり、その場合は柔軟に10x10ぐらいまでは拡張しても良いと勝手に解釈して描いています。

ちなみに使用できる色には制限は設けていません。

テーマの決め方

今まで制作したテーマの一例

毎回1つのテーマを決め、10パターンのドット絵を8x8サイズで作成します。パターン毎に全く異なるものを描くのではなく、テーマに合わせて色や形を変えて、若干異なる10個のパターンを作成することが多いです。たまにテーマ次第で10個全く異なるドット絵を描くこともありますが、全て異なる絵柄を描くのは大変なので、そのようなテーマは少なめです。

テーマは基本的には自由に決めているのですが、やはり8x8のサイズで描きやすいものをテーマにすることが多いです。実際に描いて、8x8では描けないとなるとボツにするテーマもあります。今のところ、ボツになったテーマの例は、「蕎麦」、「ギター」などです。細かいものを描き込む必要があるテーマは難しいです。ただし、うまくデフォルメしたり、省略することができれば、どんなものでも8x8ドット絵で表現できる可能性はあります。

「野菜」や「動物」などテーマを大きなカテゴリのものにしてしまうと、10パターンそれぞれを一から描く必要があり苦労するので、「野菜」であれば、「トマト」などとパターン化がしやすくなるように具体的なテーマを設定することが多いです。

また、「愛」、「希望」、「成長」など抽象的なものをテーマにするのも難しいです。抽象的なテーマが思い浮かんだ場合は、できるだけ細分化するようにします。「成長」であれば、「卵」や「筍」、「おたまじゃくし」など細分化・具体化したテーマを設定します。

制作時間

制作時間はアニメーションを作成しないものであれば、ほとんどが1時間程度です。前述しましたが、仕事終わりや就寝する前の1時間程度を使って制作しています。事前にテーマを決めておいて、1つ目の8x8ドット絵をあまり時間をかけずに作成し、それを元に残りの9パターンを一気に作成するという感じです。

イメージ調査

作成の際に参考にするのは主にGoogleのイメージ検索を使うことが多いです。イメージ探しは短時間でその時のテーマに合った形状や色味を思い出して参考にする程度で使用しています。

普段の営みになりますが、新しいテーマのアイデア出しのために海外のTwitterアカウントの「 Pixel Dailies」をフォローしています。毎日、違うテーマが発表され、海外のアーティストの方が作成したドット絵が見れるので参考になります。

制作環境について

Asepriteでテンプレートを表示したところ

ドット絵を作成する際のソフトウェアには主にAsepriteを使用しています。インプットデバイスはマウスです。ペンディスプレイも使用していますが、ドット絵を描く際はマウスを使っています。Aseprite用の8x8テンプレートを作成して制作しています。

8x8ドット絵の制作を通して学んだこと

複数のパターンの作成

前述したように通常1つのテーマに対して10個のパターンを作成しています。もしリンゴというテーマで描いた場合、わずかに異なるリンゴ10個を描くことになります。パターン同士で似たような形状になることが多いのですが、少ないピクセル数の中でいかに様々な表現を描くことができるかを日々学習しています。

8x8というサイズ

8x8のサイズというのは決して大きくはないサイズです。どちらかと言えば、自由に表現するには少し小さいサイズだと思います。しかし、このサイズ感が日々色々と試すのに良い面をもたらしてくれていると思います。約1年前にドット絵の作成を始めて、ここまで継続できたのは短時間で制作可能なこのサイズのおかげだと考えています。

2D or 3D

ドット絵は2Dですが、もちろん3D的な描き方や限定的ですが写実的な描き方が可能であることを知りました。デフォルメし2D的なフラットな絵を描くこともできるし、影を付けて立体的に描くこともできます。もちろんですが影を付けるときにはその物体の形を立体的にイメージすることが必要だということに気付くことができ、どんなグラフィックを描くとしても基本的な立体デッサンの技術は必要だなと理解しました。

とはいっても本格的にデッサンまでは再学習できていないですが、ドット絵でも、イラストでも、3Dモデリングでも、影を作るのであれば、少なからず物体の形を3D・立体で捉えなけきゃいけないということを知ることができたのは収穫でした。

正方形キャンバス

8x8サイズのキャンバスは正方形ですので、もともとその形にあったテーマの方が描きやすいです。先ほども例に挙げたトマトやリンゴのような円形や球体の物体です。そのような理由から傾向としては円形や球体のものを描くことが多くなりました。絵のフォーマットからして必然的に円形・球体の物体が描きやすいということです。

その中で気づいたことですが、どんな大きさでも8x8サイズ内に否が応でも収めてしまいますので、超巨大なものでも、極小のものも8x8サイズになります。そのことからサイズの差異があって普段は隣り合わせにして鑑賞しないような物体が実はとても似ているということに気づきました。

具体的には、「小惑星」と「じゃがいも」などはそのような良い例だと思います。当然と言えばそうなんですが。

「小惑星」

「じゃがいも」

作品のリリース

この制作を通じて初めてデジタルコンテンツをリリースするという経験ができました。現在、デジタルコンテンツの販売サイトで無料配布しており、今後、作品をアップデートしながら新しいテーマの8x8ドット絵の追加リリースを予定しています。以下は、今回の制作を通し実際に実践することができた作業です。これらの経験はドット絵に限らず、今後の様々な制作に活かせると考えています。

  1. コンテンツ制作の習慣化と継続
  2. Twitterでの作品投稿
    @t51n1
  3. BOOTHとitch.ioでのリリース作業
  4. Webサイトでの作品のカタログ化
    8x8ピクセルアート・カタログ

8x8ドット絵を描きつつ考えたこと

最も大きなもの「惑星」

最も小さなもの「いくら」

ドット絵というのは絵と文字の中間ぐらいの存在だと考えています。ざっくり言ってしまうと絵文字のようなものと言えなくもないですが、もう少し厳密に考察してみたいと思います。

なぜ文字に近いのかということですが、ドット絵では1ミリを1ピクセルで描く時もありますし、1メートルや10メートルを1ピクセルで描くときもあるわけです。他の絵画表現でも同様の変換作業を行っているわけですが、ドット絵の場合、最低描画単位が1ピクセルと定量化されています。同じ1ピクセルの黒い点を使って、1ミリの塵(チリ)を描くこともあれば、10メートルのビルの影を描くこともできるわけです。言うなれば同じ読みで別の意味になったり、同じ文字に複数の意味が含まれる言語のようなものです。

1ピクセルを使って、物事の近くに行くこともできるし、遥かに遠くに行けることもできます。そういう風に考えると絵というよりも文字もしくは言語そのものに近い存在とも受け取れるのではないでしょうか。僕はドット絵を描いていると思っているわけですが、実は絵ではなく文字を書いているとも言えるわけです。

8x8ドット絵の最終目標

100テーマ・1000パターンの8x8ドット絵

現在、約150のテーマの8x8ドット絵を作成しました。1年前はとりあえず100テーマを目指していたのですが、その目標は達成できたので、次に1,000を目標にしたいと思いましたが、今のペースで1,000テーマの達成にどれぐらいの期間が必要か単純計算したところ、あと約6.5年かかるという結果になりました。

まずは目標としてはキリの良い数として160テーマ、1,600パターンを目指し、160の目標は2022年内にはクリアすると思いますので、その先250テーマまで作成していきたいと考えています。

最終的に250テーマで約2500パターンの8x8ドット絵を全て無料で配布するというのが8x8ドット絵制作としての個人的な目標です。1年で約150テーマを作成したので、きっと来年までには完了できるでしょう。

現在は、あくまでも趣味ベースで作成しているだけですが、誰かに少しでも引っかかるような作品を生みだせれば、僕としては本望です。